U 水は命を守る、限りある自然
-
1 いろいろあるよ! 水のはたらき
(1)水と人
(2)水と動物
(3)水と植物
(4)水による地球表面の温度調節
(5)水による「汚れ」の洗浄
2 水はどのように生まれたの?
(1)水の起源、海水の起源
(2)水と空気の関係
3 水はどれだけあるの?
(1)地球上における水の量と分布
(2)地球上における水の循環と滞留時間
(3)緯度ごとの降水量と蒸発量
4 水には何が溶けているの?
(1)降水
(2)河川水
(3)地下水
(4)海水
本章では、水についての一般的なことがらについてみてみます。とくに、水と動植物とのかかわり、水が地球環境に果たす役割や、水の起源、地球上に存在する水の量と分布、水に含まれるもの、などについてみてみましょう。
1 いろいろあるよ! 水のはたらき
水は私たち人間をはじめとする動物や植物との関わりにおいて、また地球生態においてどのようなはたらきをしているのでしょうか。その概要をみてみましょう。
(1)水と人
-
山で遭難した人が、食料がなくても雨水や朝つゆでのどを潤し、飢えをしのんで数日間も生き続け、無事に生還したという二ユースを耳にすることがあリます。こんなとき、人間の生命力のすごさとサバイバルの知恵に感動します。人間は、食べものがなくても水さえあれば10日間程度は生き続けることができるとされています。もちろん個人差はありますが、あなただったらどれぐらいでしようか。ちなみに、これまでの記録では、ひと月もの間生き続けた人がいるようです。
生命を維持するのに水が必要なのは、私たちの体が水を主な材料としてつくられているからです。表 U-1にみるように人体でもっとも水分が多く含まれるのは血液でその重さの約80%が水ですし、筋肉で約75%、皮膚の約70%は水で、水分が含まれていないように思える髪の毛でさえ水が約13%含まれています。人の体全体としてみると、体の70%は水でできていることになります(図U-1参照)。また全水分に占める割合では、筋肉の水分が約43%、皮膚の水分が約21%を占めます。
私たちの体からどんどん水分を抜いてゆき、水分が40%以下になると細菌類が繁殖せず、腐敗が進行しなくなりミイラ化します。ミイラづくりは古代エジブトが有名ですが、中国や日本でもつくられていました。近年でも永久に体を残そうと死後ミイラになることを希望する人もいるようです。あなたはいかがですか。さて、人は1回におしっことして1.4L程度、汗や呼気から蒸散(これらを不感蒸池といいます)などで0.8L程度、ウンチの水分として0.1L
程度、合わせて2.3L程度の水分を体外に排出しています。一方1日に補給される水分は、食べ物から約1L 、飲料水として1L、また体内で栄養分が酸化分解されて生じる水(これを代謝水といいます)が、0.3L程度です。人はまったく水を取らな<ても、体内の老廃物を排出するために、1日に0.5L程度のおしっこをします。これを不可避尿といいますが、不感蒸池と合わせると、1.3Lは水分を出していることになり、これ以上の水分摂取があった場合に、随意尿(排尿調節部分)として排池されます。(図U-2参照)
水分が失われたら血中濃度が上がり(水分が少なくなり)のどに渇きを覚えます。激しくのどが渇くと唾液が粘っこくなってきます。このときは水分を補給しなければなりません。マラソンなどの長距離を走った場合、急激にこの状態になリます。以前は、マラソンのときなどは水を飲んではいけないと教育されていたようですが、近年ではむしろ積極的に水分補給するよう指導されています。
(高平兼司)
コラム『汗の成分』
(2)水と動物
-
私たち人間の体の70%は「水」でできています。人類以外の生物も多かれ少なかれ体内に水を含んでいます。生物の体は、いわば「水に浮いた有機体」でできているといっても過言ではありません。このように地球上の生物にとって水は、生命を維持する上で欠かすことのできない物質です。これは、水の持つ性質が生命にとって極めて有効であるからです。そのいくつかを考えてみましよう。
● 水は物質を溶かす力が強い
栄養分や酸素を組織や細胞に運んだリ、細胞から排出された老廃物や二酸化炭素を運ぶのは血液ですが、血液の本体は水です。水に赤血球や白血球などの細胞が浮かび、血しようや養分などのいろんな物質が溶けているわけです。また、細胞内を見ても水をべースにした原形質の中に核やミトコンドリアなどの細胞内物質が浮かび、酸素や養分が溶けています。このように水は物を溶かす性質があります。もし、水がものを溶かす力が弱かったら生命は誕生しなかったでしよう。
● 水は酵素のはたらきを促す
私たち人間も含めて動物は、他の生物を「食物」として摂り入れ、それを消化して、エネルギー源や体の材料となる栄養分を吸収します。食べ物を消化するとき、あるいは吸収するとき「酵素」がはたらきますが、酵素を活性化するのが水分で、ほとんどの酵素は水があってはじめて活性化します。また、消化酵素だけでなく体の調子を整えたり成長を助ける内分泌物質(ホルモン)が作用するにも水を必要とするものが多くあります。
● 水は流体である
物資を運ぶには「流体」でなければなりません。普通、水は0〜100℃では液体であり、細胞内や体内を循環することができます。幸いにして地球の表面は0℃以上の暖かい環境が大部分を占めているので、私たち人類のように自分で体温を維持できる恒温動物(哺乳類や鳥類)以外の変温動物でも凍らずに生きていけます。しかし、氷点下の環境でも生きていける変温動物や植物もいます。彼らは体内に氷点下でもある程度は凍らないようにできる機能(不凍液を有するなど)をもっています。
● 水は温度を保持する力が強い
水は、温度を一定に保つ力が大きい(熱容量が大きい)物質です。これは、周囲の温度に影響される変温動物にとって重要であり、外気温が急激に変化しても急激な体温変化は緩和されます。これは酵素のはたらきを整える上で重要です。酵素にはそれぞれの最適反応温度があり、体温がこの温度から外れると生理的活動を維持することができなくなります。
なお参考のために、各種の脊椎動物に含まれる水の比率を表U-3に表示しました。(高平兼司)
コラム『塩分にどこまで耐えられる?』/コラム『水と氷はどちらが重い?』>
(3)水と植物
-
大きな樹木を除き、生きている植物の70〜90%は水です。乾いて水分がほとんどないようにみえる種子でさえも、その重さの10%前後は水で、さかんに光合成を行っている葉にいたっては、95%にも及ぶ水を含んでいます。このように水は、植物にとっても重要な構成物質となっているほか、植物のもっとも優れた機能である光合成には、エネルギーと炭酸ガス、そして水が必要です。さらに水は植物に対し次のようなはたらきをしています。
まず、水はものを溶かす力が大きいという性質が植物の生育に関係します。植物は通常その生育に必要な栄養を土から得ますが、このとき、水が土の中に含まれる栄養を溶かし込み、植物はその栄養を含んだ水を吸収して利用するわけです(図U-4参照)。水がものを溶かすこの力には、水分子の構造が関係します。水分子は厳密にはプラスとマイナスのふたつの極性をひとつの分子にもっていて、この不思議な構造により、水には陽イオンとでも陰イオンとでも結合(水和)する、つまりものを溶かしやすい性質があるのです(
コラム『水はものを溶かす能力が大きい』参照)。
このように養分を溶かし込んだ水は、根から吸収され、主として木部の中をとぎれない連続した状態で地上部に移動し、様々な部位で植物の生育に利用されます。ところで、根から吸収された水は、大きな樹木になると数十mもの高さにまで運ばれます。このときにも水のもつ素晴らしい能力が発揮されます。水は水素結合と呼ばれるしくみで分子どうしが結びついていますが、この結びつく力(凝集力)はきわめて強いので、木部内を通る水の連なり(水柱)は簡単には切断されずに、根から吸収された水が地上部に運ばれるのです。ちなみに切花をするとき水の中で茎を切りますが、これは木部内の水柱を切らないようにするための工夫です。
このような根から地上部へ水を運ぶための吸引力は、葉で水が蒸散することにより生まれますが、この水の蒸散作用は、植物にとってまた違ったはたらきをします。まず高温時には、水は植物や土から蒸発散するとき多くの気化熱を奪い、それらを冷やすはたらきをします。一方、低温時に水は結氷しますが、このときには逆に熱を放出して、例えば植物の生育する土の温度を急激に低下させないというはたらきをします。これらには水の比熱が大きいという特徴が関係しています。このような水のはたらきは、暑い地域や季節に、また反対に寒い地域や季節において植物が生育する助けとなります。
他方、水は土の中に生育するミミズのような小動物や目に見えない微生物の生命維持にも必要です。これらの土壌生物は、土の構造を良くして植物の生育環境を整えたり、有機物を無機物に分解して植物に吸収利用されやすくするといったはたらきをします。したがってこのはたらきも、水の植物に及ぼす効果のひとつといえるでしよう。
一方、植物の生育にはどれくらいの水が必要なのでしようか。植物の乾物1gを生産するのに要する蒸散量(g)を要水量といい、この量は植物の種類と育成条件によつて大きく異なりますが、既往の研究によると、例えば、飼料作物のアルファルファで657〜1,100倍、デントコーンで280〜500倍、私たちの主食を生産するイネで682倍、コムギで557倍といったふうに、多量の水分を必要とします。つまり乾燥した状態のコメ1gを生産するのに、700g近い水が必要となるわけです。
このように、水は植物に対して多くのはたらきをもっていると同時に、植物が生育するには大量の水が必要です。私たちの食料は、元をたどればすべて植物が生産してくれたものです。この点からも、水のありがたさと良質な水資源を十分確保することの重要さがわかります。
(中西康博)
(4)水による地球表面の温度調節−地球の気温を15℃に保っているからくり−
- 地球には赤道地域のように年中暑い所と、北極や南極のように寒い所があります。宮古のように夏は30℃を超し、冬は10℃以下になることのある所もあります。このように気温は場所によっていろいろですが、地球全体を平均すると15℃です。
ところで地球の気温を15℃に保っているからくりはどんなものでしようか。
図U-5を見て下さい。この図には太陽から地球に入ってきた熱が地球でどんな経路をたどって宇宙へ放出されているかが示されています。太陽から地球に入ってくる熱量を100とします。そのうち30は地球の大気(空気)中にあるゴミや空気をつくっている分子などに当ってすぐに宇宙空間へ反射されてしまいます。23はそれらゴミや分子に吸収されてしまいます。残り47だけが私たちの住む地表に到達し、暖めます。
ところでここにステファンとボルツマン(Stefan,Boltzmann) という物理学者達が登場してきます。その先生方はある熱量が入ってきて暖めると、その周辺の気温は何度になるかということを考え出しました。その考えに従って計算した値が表U-5に示されています。
この表を見ると入ってきた熱量が47の時、気温はマイナス41℃です。これでは15℃は説明できません。
ところで前に23だけは空気中のゴミや分子に吸収されると述べました。それは吸収されて空気中にためられています。温室効果ですね。温室効果をもたらす熱は23の他に、図U-5では出力の方になりますが、熱が地球から放出されるときにも空気中のゴミや分子に吸収されます。それらが73にも達します。
それで地表を暖めている熱としては47+23+73で143になります。すると表U-5から31℃になってしまいます。これでは暑すぎます。
ここで登場するのが水と空気です。よく知られているように、水は熱せられると水蒸気になって上空へと運ばれていきます。空気も暖められると軽くなって、上空へ運ばれます。このように水と空気が熱を吸収して運んでいく熱量が24と6になります。そうすると地表周辺を暖める熱量は113になります。そしてこれだけの熱量で暖められると、表U-5からわかるように15℃になります。こうして地球の気温は説明できます。
地球の気温を15℃に保つのに水は大きく係わっています。こうして地球上に水があることの大事さがまたひとつわかってきます。
(渡久山章)
(5)水による「汚れ]の洗浄
- ● 水といのち
水と私達の関係に対する考えは、この20年間で大きく変わったといえます。それはこれまでの考えに、さらに新しい考えが加わったからです。これまでの考えとは、水が人間や他の動物や植物の体を構成している重要なものだから、大事だということです。そんな考えに新たに加わった考えというのは、(1)生物体内、身の周り、それに大きく地球環境としても汚れをためては生物は生きられない、(2)その汚れを取り除いてくれるのが水だという考えです。
私達は日に 3 回食事をとります。それらの一部は養分となって体を構成します。残りは要らなくて排池物になります。私達はそれらを尿や便として排池しています。それは水が物を運んだり、溶かしたりする能力があるからなのです。水に乗せて捨てることのできるものだけを食べなければなりません。例えば水俣病とかイタイイタイ病という悲惨な公害病は、水に乗せて捨てることのできない水銀や力ドミウムを体内に取り入れてしまったから起こったのです。私達は水を使って体に不要なものを排池しなければなりません。
私達は日頃食べることに一所懸命で、排池にはあまリ気を使いません。健康な時はそうなのですが、排泄機能が衰えてくると水に乗せて捨てることの大事さがわかってくるのです。
● ものをつくるとはどんなことか?
水が汚れをとるという性質が、私達生きものにとって、大事だということを述べましたが、ここではその考えをふくらませることにします。図U-6を見て下さい。この図には山から鉄鉱石を採ってきて工場に入れ、人の知識や力を働かせて鉄筋を造っていく工程が示されています。鉄鉱石はいろいろな不純物を含んでいるので価値が低いものです。それに価値を与えて価値の高い鉄筋を造ったのが、人の知識や力というわけです。
ところが考えてみると鉄筋を造るために工場では大量の水(しかも汚れていない)と石油など燃料を使っていることがわかります。この水と石油を加えた工程図が図U-7です。この図を基に考えると水と石油が大きな価値を持っていて、それを鉄鉱石に与え、人の知識と力も合わさって価値の高い鉄筋を造っていくことがわかってきます。
ここで水は何をしているかを考えてみると、鉄鉱石に混じっている土とか他の金属類など、鉄以外の物を洗っていることになります。ものをつくるということは、不純物を除いて純粋なものにしてしていくこと、ともいえます。その時、水の洗浄能力が大きな役目を果たしているわけです。
ここで水と石油の違いについても考えてみます。一般に工場で使う水と石油の量比は20対1といわれています。このことは石油はあるが水は足りないという国では工業は興りにくいことを示しています。日本は石油は少ないのですが、雨は世界平均の約2倍です。日本が工業国として栄えているのは、雨水のおかげともいえます。
水、くり返しますが、きれいな水の確保は今後、宮古、沖縄、日本、世界、どこでもますます大事になっていくと思われます。何故きれいな水かといいますと、汚れた水では原材料に含まれている不純物(汚れ)を取り除くことは難しいからです。
(渡久山章)
コラム『水はものを溶かす能力が大きい』
2 水はどのように生まれたの?
地球上に存在する水はもともとどのように生まれたのでしょうか?水の起源論には様々あるようですが、そのうちもっとも有力とされている説を紹介しましよう。
(1)水の起源、海水の起源
- 地球には大量の水(1.386×1024g )が存在しています。その96.5%は海にあります。これらの水はどのようにして生まれてきたのでしようか?
まず水を作っている水素や酸素などの元素が宇宙全体にどれだけ存在しているかを推定します。このことは隕石の1種(炭素質コンドライト、タイプ1)を分析し、宇宙で元素がどのようにして作られてきたか(元素生成論)を考えてなされます。
宇宙における元素の存在度がわかりますと、それをもとに地球を作ってみます。地球の固体部分(岩石)を作ると、残りは水とガスになります。地球が作られた初めの頃、地球は高温だったと思われます。水も気体状態にあったのです。この気体を1次原始大気と呼んでいます。ところが現在の水やガスなど、揮発性物質の組成と量は、1次原始大気のそれとは違っています。1次原始大気は地球外に逃げてしまったに違いありません。
したがって現在地球表面にある水などの揮発性物質は、地球形成の途中か、形成後かに固体部分から出てきた(脱ガス)と考えざるをえません。このガスは2次原始大気と呼ばれています。2次原始大気の組成は表U-6のように推定されています。この推定に当っては、軽いためすでに地球圏外に逃失してしまったと思われる水素ガスの補正がなされています。2次原始大気が出てきて、地球表層の温度が下がってくると、水蒸気から水が生じてきます。これが地球における水の始まりです。そして火山活動によって出てきた塩酸ガスはこの水に溶けます。これが最も初めの海水といえます。おそらく0.1モルオーダーの塩酸水溶液ではなかったかと思われます。
その後、この塩酸酸性の原始海水が玄武岩などと反応してナトリウム、力リウム、力ルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムなどを溶かして次第に中性化していったと思われます。初めの岩石は粘土鉱物に変化し、アルミ二ウムは再沈澱します。また大気中の二酸化炭素は水に溶け込み、すでに溶けている力ルシウムと反応して、炭酸力ルシウムを沈澱させます。生じた粘土鉱物と水との反応で海水はアルカリ性を保つので、大気中の二酸化炭素はどんどん溶けこんで炭酸力ルシウム生成量は増加していったと思われます。海水の主要化学組成はこれらの鉱物と海水との反応で決められ、生命が海水中で誕生した38億年ほど前には現在とほぼ同じくらいになったのではないかといわれています。
(渡久山章)
(2)水と空気の関係
- 大気(空気)の化学組成も水と深<係わっていることを紹介しましよう。地球大気の化学組成は窒素が最も多く(78%)、次いで酸素(21%)で二酸化炭素(炭酸ガス)は0.035%と少ないことは知られています。
ところで表U- 7に示したように、地球と同じ材料から出発したと思われる金星や火星の大気は95%以上が二酸化炭素です。同じ材料から出発したと思われるのに、地球大気の組成はどうしてこうも変わってしまったのでしようか?
地球大気の組成を金星や火星のそれらと比べると、もうひとつ変わっていることがあります。それは酸素の割合が多くなっていることです。ですから地球大気の変化を考えるとき、二酸化炭素が減少した理由と、酸素が増加した理由を考えることがポイントになります。
二酸化炭素が減少し、酸素が増加しているというと、植物による炭酸同化作用(光合成)が考えられます。ひとつの答えはその通りで、地球上に植物が現れ、水と二酸化炭素を材料にして有機物を合成したために、二酸化炭素は減り、酸素が増えてきたといえます。
酸素の増加と二酸化炭素減少の一部はそれで説明できますが、二酸化炭素の減少にはあとひとつの理由が考えられます。それは宮古島などを造っている石灰岩が地球上には多量に存在していることによって考えられます。
石灰岩は炭酸力ルシウムという物質からできています。炭酸力ルシウムは44%の二酸化炭素を含んでいます。もし地球上にある炭酸力ルシウムを全部分解すると、地球大気の95%以上が二酸化炭素で占められると思われます。結局地球ができるはじめにあったと思われる二酸化炭素のかなりの部分が今では岩石(石灰岩)に形を変えて、宮古島などを造っているわけです。
ところでこのような二酸化炭素の減少や酸素の増加は、どこで水とつながるのでしようか?それは植物の場合、陸水や海水があるからこそ生存できること、サンゴなど炭酸力ルシウムの殻をつくる生物も海水があるから生きていることを考えると、わかってきます。
地球に水があって植物や炭酸力ルシウムの殻をつくることのできる生物が生存できたから、大気(空気)の化学組成は変わってきたといえます。そして私たち、人間も生存していると思われます。
(渡久山章)
3 水はどれだけあるの?
あらゆる生命にとって欠<ことのできない水は、地球上にどれくらいあって、どのようにめぐっているのでしようか。そして、私たち人類にとってとりわけ大切な淡水は、どこにどれくらいあるのでしようか。
(1)地球上における水の量と分布
- 表U-8に示したように、地球上には約13億8,600万km3の水がありますが、このうちの96.5%は海水で、淡水はわずか2.53%に過ぎません。さらに淡水の約70%は、氷河のように凍った状態にあるものです。また地下水は水全体の1.7%を占めますが、このうち淡水部分は約45%です。
地球は「水の惑星」と称されますが、その水のほとんどは海水であり、飲料水として使える淡水の部分はごくわずかなのです。
(中西康博)
コラム『地球上の水を日本の上に積み上げてみると?』
(2)地球上における水の循環と滞留時間
- 地球全体では、図U-11に示したように、年に約50万5,000万km3
の水が海から空へと蒸発してゆきます。その水の約90.7%は、数日の間に雨として,ふたたび海に戻ります。陸地への降水量は年間約11万 6,000万km3ですが、このうちの約61%は動植物の蒸発散を通じ、数か月以内には大気に戻り、約38.5%は河川を通じ、海に至ります。
陸地に降った水が地下水を通じて海に流れ込む量は、年に2,200万km3とわずかですが、地下での水の滞留時間が長いために、1,080万km3の水が貯えられており、重要な貯水場所になっています。
なお、極地(とくに南極)の氷や氷河として存在する水の量は意外に多く、これらの合量は地下水の約2.2倍にも達します。しかし、これらは簡単には利用できない水です。かつて、南極の氷山を曳航して、アフリカの砂漠で利用しようとした壮大な試みがあリましたが、この計画は残念ながら失敗に終わっています。一方、水は循環資源であることから、循環によって得られる量は、循環のスピードに大きく関係します。
例えば、地下水は淡水資源の約30%を占めていますが、国連の報告によれば表U-9に示すように、再生までの期問は、平均すると約1,400年かかります。一方、水資源の中心になっている河川水については淡水資源の約0.06%を占めるに過ぎませんが、再生までの期間は約16日とされています。これからいえることは、河川水は、量は少ないが何回も利用できるということになります。
(中西康博・高平兼司)
コラム『川の水や地下水はどこからくるの?』
ことば『硬水と軟水』
(3)緯度ごとの降水量と蒸発量
-
地球の緯度ごとに降水量と蒸発量が調べられています。その結果を図U-13に示しました。横軸には(降水量−蒸発量)が目盛られています。したがってこの値が0である地域は、降水量と蒸発量が同じであることを示します。
右側の−部分は降水量よりも蒸発量が多いことを示しています。降水量よりも蒸発量が多いのですから、このような地域では水が不足して、場所によっては砂漠になつていることがうなずけます。高緯度地域(南・北緯70〜80度)と、南・北緯10〜40度域がこのような状況にあります。
反対に横軸の値が+の地域(南・北緯40〜70度、南緯10 から北緯10度)は、水の多い地域といえます。
沖縄県の最南端、波照間島は北緯24度、最北端の伊平屋島は北緯27度付近ですから、この分類によると、本来、沖縄県は(降水量−蒸発量)の値はマイナスになる、つまり砂漠の多い地帯に位置していることになります。しかし実際には、沖縄には川が流れ、地下水があって私達が生活しています。
それはどうしてでしようか?沖縄は島が小さくて周りの海から蒸発した水が降ってくるからです。沖縄に住む人々にとってはこの意味でも海がとても大事といえます。日本全体を考えると、北の方になるにつれて蒸発量より降水量の多い地域になつていきますので、利用できる水が多い地域になって、農業や工業活動が盛んになれると思われます。
(渡久山章)
4 水には何が溶けているの?
地球上で水は、雨水、河川水、地下水となって海に流れ込み、それらが蒸発して雲となって、また雨となるというふうに、循環を繰り返していますが、そのときどきにどのような物質をどれくらい溶かし込んでいるのでしようか。
(1)降水
-
降水(雨)に溶けている物質と濃度は、雲の中で雨ができるときに取り込む物と量、できた雨が大気中を通ってくる間に溶かしてくる物と量によって決められます。雲や大気が汚れていると、雨の濃度も高くなります。一般に海近くの雨は海からの飛沫などの影響を受け、工業地帯の雨は工場から排出される物質の濃度が高くなり、自動車の多い街に降る雨は自動車から排出されるガスの影響を受けます。
表U-10にはアメリカ内陸部、日本各地の雨、沖縄(大里村)の雨に溶けている物質と濃度を示しました。アメリカ内陸部では硫酸と硝酸イオン濃度が比較的高く、工場や自動車の影響を受けているといえます。それに対して日本各地の平均値はナトリウムと塩化物イオン濃度がかなり高く、海水の影響をより強く受けているといえます。また硫酸と硝酸イオン濃度も高く、やはり工場や自動車の影響も大きいといえます。特に硫酸イオン濃度が高く、1960年頃には石炭使用量が多かったことがわかります。沖縄の雨は上記2か所に比べるとナトリウム、塩化物イオン濃度がかなり高く、海の影響を大きく受けています。沖縄の雨について、塩化物イオンと硫酸や硝酸イオンの濃度を海水におけるそれらの濃度と比較すると、沖縄の雨であっても硫酸と硝酸イオン濃度が高いといえます。これは、沖縄に降る雨であっても、工場や自動車の排出ガスの影響を受けていることを示しています。なお3地域での合計濃度は各々5.3mgL
-1 、11.1mgL-1、19.8mgL-1となり、後で述べる河川水と比べて、とても低濃度であることがわかります。
(渡久山章)
コラム『「酸性雨」って何?』
(2)河川水
-
世界、日本、沖縄島北部、中部の河川水に溶けている成分を表U-11に示しました。河川水の主要成分はこの表にあげたように、8種です。同表にはこれらの合計濃度も示しました。
海水の場合、合計濃度は35gL-1ほど(表U-13参照)ですが、ここにあげた河川水の場合は最高でも 0. 61gL-1でしかありません。海水と比べると約60分の1です。
表U-11を見て気付くもうひとつのことは、世界や日本の値と比べて沖縄島北部、中部の河川水におけるナトリウムと塩化物イオン濃度が高いことです。これら2成分は海水に最も多く含まれている成分です(表U-13参照)。沖縄島は世界や日本本土に比べて島が小さく風も強いため、海水から運ばれてくる塩水が多いことがわかります。
また、沖縄島中部の河川水で目立っているのは、力ルシウムと炭酸水素イオン濃度が高いことです。これらは沖縄島中部に分布する石灰岩に由来する成分です。石灰岩は宮古地方にも広く分布しているので、宮古地方の地下水中の力ルシウムと炭酸水素イオン濃度は、沖縄島中部河川水の濃度に近くなります。そのことは表U-12を見るとわかります。
表U-12にあげた宮古島と伊良部島の地下水よリも、沖縄島中部河川水の方が合計濃度は高くなっています。沖縄島中部に位置する比謝川は都市域を流れているので、人間活動の影響を受けているためといえます。
(渡久山章)
(3)地下水
-
地下水の例として、沖縄県名護市源河集落内、宮古島白川田水源、伊良部島字伊良部の洞窟水の3つを取り上げ、それらの化学組成を表U-12に示しました。さらに比較のため、名護市源河集落はずれにある源河川取水ポンプ場で採った河川水の化学組成も示しました。
この表から、源河川取水場と近くに位置する地下水の濃度の合計が2倍くらい違うことがわかります。表流水(河川水)に比べて地下水の濃度は高いといえます。地下水は土壌や岩石との接触頻度や時間が長いからだと思われます。表にあげた9つの成分全てについて、地下水の方が高濃度でした。
次に、宮古島地下水の化学組成を沖縄島源河集落内の地下水のそれと比べますと、濃度の合計で宮古島白川田の方が約2倍、伊良部島の地下水は2.1倍も高いといえます。宮古の水に高濃度で含まれているのは、海起源のナトリウムと塩化物イオン、石灰岩由来の力ルシウムと炭酸水素イオンです。これら4種のイオン濃度が高いということは、宮古の水は海洋と石灰岩の影響を大きく受けているといえます。宮古の水の中でも伊良部島の方が、海洋の影響をより大きく受けているといえます。宮古の水で濃度が低いのは溶存ケイ酸です。これはケイ酸塩岩石に由来するものですから、宮古の水はケイ酸塩岩石の影響は小さいといえます。
(渡久山章)
(4)海水
-
海水1kg中に溶けているイオン(陽イオン、陰イオン)の量を、表U-13にグラム単位で示しました。海水 1kg には約359の物質(塩類)が溶けています。この表を見ますと、359中塩化物イオンが19.35g、ナトリウムイオンが10.79溶けていますから、この2種で、全溶存イオンの86%を占めています。今から40〜50年前まで、宮古には塩田があって、そこで海水を濃縮して塩(塩化ナトリウムが主成分)を作っていました。表を見るとこのことがよくわかリます。
陽イオンでナトリウムの次に多いのはマグネシウムイオンです。これはニガリの成分で、豆腐を作るときに役立ちます。かつて各家庭で豆腐を作っていた頃はビンや桶に海水を汲んできて、使ったものです。
陰イオンで2番目に多いのは硫酸イオンです。硫酸イオンにはイオウが含まれています。イオウは硫化水素という臭いのあるガスの成分でもありますから、海水が入ってくるマングローブ生育域などにはしばしば硫化水素の臭いがします。これら
4 つのイオンの合計は34.12gに達し、全体の97.3%を占めます。海水にはおそらく90種類くらいの元素が溶けていると思われますが、主要4種で97%以上を占めているわけです。これらの他、陽イオンではカルシウムとカリウムイオン、陰イオンでは炭酸水素イオンを加えますと、ほとんど100%になってしまいます。これら以外の80種くらいの成分の濃度はとても低いわけです。
(渡久山章)
コラム『海水と血液の成分』
このページのトップへ